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胸腺腫と重症筋無力症がなぜ合併するのか

 2022年8月5日に大阪大学の研究グループより、胸腺腫と重症筋無力症がなぜ合併するのかを明らかにした研究結果が発表されています。 胸腺腫と重症筋無力症がなぜ合併するのか 研究成果のポイントは、以下の3点で、最後にも記載されている通り、新たな薬の開発の可能性があることです。 ・胸腺腫と重症筋無力症の合併率が高いことが知られていたが、なぜ合併するのかは長らく不明であった ・重症筋無力症の原因となる、神経筋関連因子を発現する新規細胞を同定し、重症筋無力症合併胸腺腫内で、この新規細胞が異常なB細胞とT細胞の活性化を引き起こすことを発見 ・重症筋無力症の病態をターゲットとした新規治療開発に期待 これはかなり大きな発見だと思いますので、患者としては大変うれしい報告になります。

運動プログラムは、筋肉、身体機能を改善しました

 myasthenia gravis newsに、MG患者の運動と筋肉についての研究に関する報告が載っていました。 Exercise Program Improved Muscle, Physical Function MGと診断された場合に、医師から運動について指導されることがあると思いますが、これについては医師の独自の方針によるところが多いようで、日本ではガイドラインなどがあるわけではないようです。 この報告によると「身体運動は安全で効果的であり、MGが十分に調節されている患者にとって適切です」とされています。ただし、MGの症状が安定してコントロールされている患者さんに限定して言えることのようで、そうでないMG患者についてはリスクがあるかもしれません。 なお、この報告で1点だけ気になったのが、 「研究者が患者を週の中央値より上または下で運動したかどうかによって2つのグループに分けたとき、彼らはより多く運動した患者が腕のより多くの筋肉量も失うことを発見しました。」 というコメントです。 これによると、運動量が多いグループの方が腕の筋肉量を多く失うとあり、これをどう解釈して良いのか分かりませんでした。 総論としては、症状が安定しているMG患者に推奨されるようですが、筋肉が失われるという結果をどう解釈して良いのか、モヤモヤが残るところです。

デカルト-08というCART細胞療法により、MGの症状が緩和された

 myasthenia gravis newsに、新たな治療方法の研究に関する報告が載っていました。 CAR T-cell Therapy Descartes-08 Eased MG Symptoms 治験中のCART細胞療法であるデカルト-08によって、第1/2相臨床試験に参加した3人の患者の重症筋無力症(MG)が症状を著しく緩和したとのこです。 ただし、3人の症状が緩和したに過ぎないため、研究の成果としては非常に弱いものとなります。 CART細胞療法は、患者自身のT細胞を取り出し、遺伝子医療の技術を用いてCAR(キメラ抗原受容体)と呼ばれる特殊なたんぱく質を作り出すことができるよう、T細胞を改変します。CARは、がん細胞などの表面に発現する特定の抗原を認識し、攻撃するように設計されており、CARを作り出すことができるようになったT細胞をCART細胞と呼びます。このCART細胞を患者さんに投与することにより、治療するのがCART療法です。 デカルト-08では、T細胞はB細胞成熟抗原(BCMA)と呼ばれるタンパク質を標的とするCARで修飾されています。BCMAは、MGで重要な役割を果たすと考えられている成熟B細胞に由来する抗体産生免疫細胞の一種である形質細胞の表面に見られます。したがって、デカルト-08の目的は、BCMAを標的とするCART細胞を使用して、これらの疾患を引き起こす免疫細胞を殺すことです。 このように、デカルト-08では、CART細胞を利用して、MGを引き起こす免疫細胞を抑制することで、MGの症状が緩和されることが期待できるようです。

重症筋無力症の遺伝的危険因子

 myasthenia gravis newsに、遺伝子に関する研究についての報告が載っていました。 MG Genetic Risk Factor Directly Tied to Neuromuscular Junction Identified 欧米での研究では、MGになる危険性の高い遺伝子について研究が進んでおり、特定の遺伝子を持つ人にMGが発症しやすいと述べています。 既にMGを発症している人については、なかなか活用しにくい知見ですが、未だMGを発症していない人にとっては、その遺伝子を保有している場合には、発症しないように気を付けるべきマーカーとなるため、意味がある研究だと思います。

カルプロテクチンが、MG重症度のマーカーとなる可能性がある

 myasthenia gravis newsに、MGのマーカーに関する研究についての報告が載っていました。 Calprotectin, Inflammatory Protein, May Be Biomarker of MG Severity MGのマーカーとしては、抗AChR抗体といったような抗体がよく使われていますが、MGの(抗体別の)種類に関係なく、重症度を計測するためのマーカーについての研究が行われています。 カルプロテクチンと呼ばれる炎症関連タンパク質は、重症筋無力症(MG)の患者の血中に異常に高いレベルで存在する、と研究では報告されています。 現状では、MGの重症度は体感ベースでしか測定されていませんので、抗体種類に関係なく、重症度が測定できるマーカーが発見されれば、MGの重症度を客観的に測定できるようになるので、公的扶助を得るときに公平性が保てるようになるかもしれません。

MG患者の腸内細菌叢の組成に見られる違い

 myasthenia gravis newsに、少し面白い研究結果が載っていました。 Differences Seen in Composition of Gut Microbiome in MG Patients 日本でも、腸内細菌叢=腸内フローラに関するニュースを目にすることが良くありますが、MGに関しても同じように腸内フローラが影響しているのではないかという記事がありました。 MG患者は、そうでない人と比べて腸内フローラの多様性が低いという研究結果が出たというものです。 腸内フローラについては、まだ研究も途上で、今後もっと研究を勧めないと分からないことが多いですが、もし、腸内フローラを改善すると、MGが緩和されるとか、MGが治るということになった場合には、腸内フローラ移植(便移植)といった治療が行われるようになるのかもしれません。

免疫抑制剤は、眼筋型MGが全身型MGに進行するリスクを軽減する可能性があります

 myasthenia gravis newsに掲載された研究の成果です。 Immunosuppressants May Reduce Risk of Ocular MG Progressing to gMG 眼筋型のMG患者が、免疫抑制剤を利用すると、利用しない場合に比べて全身型に進行する可能性が低くなると報告されています。 2年間の比較では、全身型に進行したのは、免疫抑制剤を投与された患者(16.9%)に対して、薬剤を投与されなかった患者(40.8%)となっている。 4年間での比較では、全身型に進行したのは、免疫抑制剤を投与された患者(25.3%)に対して、薬剤を投与されなかった患者(51.9%)となっている。 全身型への進行までの時間の中央値は、免疫抑制剤で治療された患者が(3.1年)に対して、薬剤を投与されなかった患者が(1.7年)であった。 もしこの研究が正しいのであれば、眼筋型の時点で早期診断を受けて、免疫抑制剤を利用することで、全身型に進行しないように予防することが大切になると思います。

抗アセチルコリン受容体抗体価が予後予測に有用なマーカーという報告

 千葉大学と京都府立医科大学の共同研究のニュースリリースです。 指定難病「重症筋無力症」の予後予測に有用なマーカーを発見 ~治療の最適化による副作用軽減・生活の質改善に期待~ 抗アセチルコリン受容体抗体が陽性のMG患者さんは、抗アセチルコリン受容体抗体価(以下「抗AChR抗体価」)の数値を定期的に検査をしていることが多いと思いますが、ステロイドを使ってMGの治療を始めた患者のうち、治療開始から100日以内に抗AChR抗体価の減少率が高い人が、MM(重症筋無力症の一般的な治療目標である軽微症状)に早く到達し、1年後の予後が良好でステロイド内服量も少ない、という内容です。 非常に簡単に訳すると ステロイドを使って抗AChR抗体価が早く下がる人ほど、早く良くなるし、あとあとのステロイドの内服量も少なくなる という話ですので、それはそうなんだろうなという印象です。 しかし、MG患者の体感的な症状と抗AChR抗体価の数値は必ずしも一致しないため、抗AChR抗体価の数値は副次的な指標になりがちですが、この研究の結果、ステロイド治療の結果もたらされる抗AChR抗体価の減少の程度が、1年後の体調を予測するのに使えるというのは、1年後の体調すら自信をもって語るのが難しいMG患者にとって、大いに価値があるのかもしれません。

患者主導の研究が MG とともに生きることの課題を浮き彫りに

 2021年の米国神経学会でのプレゼンテーションの解説です。 #AANAM – Patient-led Study Highlights Challenges of Living With MG 患者主導の研究(Patient-led Study)が、MG患者の心の内を詳細に分析した報告を行っています。 患者主導の研究というのは、当事者研究とは少し違うようですが、今回の報告を見ると、MG患者の置かれた心の葛藤がとても分かり易く描かれているように思います。 そういう意味では、報告内容を読んでいると、非常に納得感のあるものでした。 アメリカのMG患者も日本のMG患者と同じように、病気への不安を抱えつつ、薬の効果と副作用の調整に苦慮し、見た目からは分からない病気のため日々の生活の悩みが周囲に理解されないこと、これらの葛藤を主治医がきちんと理解してくれないことへの不満を持っている、ということが描かれています。 是非、Google翻訳で良いので、報告を読んでいただくことをお勧めします。 こういった研究報告は、医師が興味のあるテーマではないため、患者が主導しない限りは生まれてこないのではないでしょうか。そういう意味では日本でも、患者が主導して研究を行う必要がありそうです。

早期発症の MG には胸腺摘出術の方がよい可能性がある

 myasthenia gravis newsに新しい研究の成果が掲載されています。 Thymectomy May Be Better for Early-onset MG 胸腺摘出術 (胸腺の外科的切除) は、早期発症型の非胸腺腫性重症筋無力症(MG)患者を治療するためのより良い選択肢である可能性があることが、研究で判明したという報告です。 メタアナリシス(既存の複数の研究の結果を統合して分析する手法)による結果ですが、晩期発症型MGには胸腺摘出は明確な効果は見られなかったようです。 日本の重症筋無力症診療ガイドラインと違いは無いように感じます。

マイクロ RNA 分子 miR-146a は有用な診断マーカーとなる可能性がある

myasthenia gravis newsに新しい研究の成果が掲載されています。 Micro RNA Molecule miR-146a May Be Useful Diagnostic Marker MG患者には、miR-146a と呼ばれるマイクロ RNA 分子が血液中に高レベルで発見され、これが病気の発症に寄与すると考えられている、との報告が単一施設の研究成果として報告されています。 miR-146a が疾患の重症度に関連している可能性があり、「MG の診断と進行の予測に役立つ」可能性があるとのことで、臨床で活かされるようになるにはまだまだ時間がかかりますが、少しでも研究が進むのは我々MG患者にとっては心強いことです。